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国立博物館「黒田清輝特別展」を見る

上野の国立博物館に行ってきました。
目当ては「黒田清輝特別展」。
美術館ではなく博物館で開催というのがポイント。

黒田清輝といえば「日本近代絵画の巨匠」「日本の西洋絵画の父」とか言われるわけですけど、現代の目で見ると技巧や構図でさほどの凄いものがあるわけではない。
割と平凡と言ってもいいと思います。
しかし黒田の絵は、まだ「西洋絵画」が全く理解されていない明治日本にその技術を持ち帰り、日本の美術行政・美術教育を切り開いたという「文脈」を理解した上で観ると感動的なものとなります。

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そもそも黒田は法律家をめざしてフランス留学。
明治初期ですから、国費・私費を問わずまさに「国家を背負って」留学しているわけです。
しかし伊藤博文に代表されるドイツ学派にやぶれ、法律家としてはしごを外れてしまう黒田。

展示はそんな黒田が、フランス絵画に出会った頃のスケッチに始まります。
この頃の黒田の絵はお金もないため、描くのは友人や家の中、近所の風景ばかり。
しかしそれらはやわらかな陽光につつまれ、希望と喜びに満ちているように感じました。いわゆる「青春」ってやつです。
そして恋人マリアとの出会い。
教科書に必ず載っている『読書』のモデル。

そして印象派絵画を学び、技術を着々と吸収。

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ここで国立博物館の面目躍如というべきが、当時黒田が学んだコラン、ミレー、モネ、ブルトンバスティアン=ルパージュらの絵画を「よくもこんなに借りてきたな」というくらい並べて見せるところ。
さらには黒田が「巧く盗んだ」構図を元ネタと比較・検証してくれます。
さらっと展示してましたけど、ここのキュレーターは凄い。

で、黒田は帰国してフランスで学んだ「光と色」で日本女性を表現し、大評判となります。
共和的(これもフランスっぽいところ)な絵画団体を結成して「新派」と呼ばれるようになりますが、その後西洋の美術教育では必須とされる裸体像を描いてバッシングに遭う。

このあたりからフランスでは「学びの喜び」にあふれていたものが、日本に帰ってきた途端に「第一人者」とされ、参考とする先達のいない中で自らが日本美術の近代化を牽引する立場となり、描きたい絵を徐々に描けなくなっていく様が明らかになっていきます。

絵にも苛立ちや焦燥が見て取れ、個人的には胸に迫るものがありました。

で、最後は現代に至るも解釈が固まらない『智・感・情』。
これは金箔地になっており、写真で観ても迫力が全く伝わりません。
これだけでも実物を観る価値がありました。

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博物館の外に出れば上野の桜。